肥大型心筋症は遺伝する?MYBPC3・MYH7の浸透率と遺伝子検査の読み方|研究とガイドラインで解説
本記事は教育目的の情報提供です。 本記事は診療・診断・遺伝カウンセリングを代替するものではありません。 発症リスク・検査の要否・治療方針は、主治医・臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーにご相談ください。 失神や強い胸の痛みなど緊急時は、ためらわず 119 番へ連絡してください。

父が肥大型心筋症と診断されて、僕もなるのかと不安で…

気持ちはわかります。遺伝する病気でも、受け継ぐことと発症することは別だと研究では区別されています。そこから一緒に整理しましょう。

遺伝子検査で分かるらしいけど、結果に耐えられるか…

結果の受け止め方は一人で抱えなくて大丈夫です。国内の手引きでも、結果を受け取ったら遺伝カウンセリングで相談することが勧められています。

子どもにも遺伝するんですよね? 妻にも話さないと…

家族のことを心配するのは自然なことです。ガイドラインでは家族の検査や検診の進め方が整理されているので、順を追って見ていきましょう。

具体的には、僕はまず何から動けばいいんですか?

まずは主治医への相談からです。本文ではガイドラインに沿って、受診の目安、検査の選び方、結果の読み方、家族の検診を順に解説します。
結論: 研究とガイドラインでは、肥大型心筋症は約 500 人に 1 人の病気とされます。 原因遺伝子を受け継いでも、必ず発症するわけではありません。 遺伝子検査は、家族の心エコー検診を誰が続けるべきかを決める入口です。 陰性でも家族歴があれば、定期的な心臓の検査が勧められます。
この記事でわかること
- 原因遺伝子 (MYBPC3・MYH7 など) と、子に受け継がれる確率の正しい意味
- 浸透率の研究値を「100 人中何人」で読む方法
- 保険診療の遺伝学的検査と 23andMe などの DTC 検査の違い
- 新薬の効果と安全性、指定難病の助成と生命保険の扱い
肥大型心筋症はどう遺伝する?原因遺伝子と遺伝の仕組み

父の病気が僕に伝わる確率って、どれくらいなんですか?

多くは常染色体顕性遺伝で、子に変化が伝わる確率は50%とされます。ただしこれは伝わる確率で、発症する確率とは別物です。
肥大型心筋症 (HCM) は、心臓の筋肉が厚くなる病気です。 多くはサルコメア (= 心筋が縮むための最小部品) を作る遺伝子の変化で起こります。 最も多い原因は MYBPC3 と MYH7 です。
遺伝形式は、多くが常染色体顕性遺伝です。 常染色体顕性遺伝 (= 親の片方から変化を受け継ぐと発症しうる仕組み) では、子に伝わる確率は 50% です。 ただし 50% は「変化が伝わる確率」で、「発症する確率」ではありません。 親に病歴がなく、本人で新しく生じた変化 (de novo) で発症する例もあります。 一部の遺伝子では、常染色体潜性遺伝の例も報告されています。
国内の合同ガイドラインは、患者に見つかる遺伝子の割合を次のように示しています。
| 遺伝子 | 原因変異のある患者に占める割合 |
|---|---|
| MYBPC3 | 40〜45% |
| MYH7 | 15〜25% |
| TNNI3・TNNT2 | 各 1〜7% |
| TPM1・ACTC1・MYL2・MYL3 | 各 1〜2% |
HCM との関連が確実な遺伝子は 8 つ程度とされ、結果は慎重に解釈されます。 設計図の同じページに誤字があっても、読み違え方は人により違う、と考えるとイメージしやすいでしょう。 家族に HCM の人がいる場合は、まず循環器内科の主治医に相談してください。

家族に患者がいたら、最初はどこに相談すれば?

まずは循環器内科の主治医に相談を。国内ガイドラインでは関連が確実な遺伝子は8つ程度とされ、検査結果も慎重な解釈が必要です。
ここまでのまとめ: HCM の多くはサルコメア遺伝子の変化による常染色体顕性遺伝です。子に伝わる確率 50% は、発症確率とは別物です。
発症リスクの数値:浸透率と予後を「100 人中」で読む

遺伝子を持っていたら、いずれ必ず発症するんですか?

必ずではありません。浸透率は対象集団で大きく変わり、家族検診で見つかった保有者と一般人口の保有者では研究値に差があります。
浸透率 (= 遺伝子の変化を持つ人のうち、実際に発症する人の割合) は、対象集団で大きく変わります。
| 対象 (研究) | 結果 | 100 人に置き換えると |
|---|---|---|
| 家族検診で見つかった未発症の保有者 | 15 年時点の推定浸透率 46% | 約 46 人が 15 年以内に発症 |
| 一般人口で偶然見つかった保有者 | 心筋の肥厚あり 18.4% | 約 18 人に肥厚 |
| 一般人口の保有頻度 | 0.25% | 約 400 人に 1 人が保有 |
家族歴のある家系での陽性は、偶然見つかった陽性より発症しやすい傾向です。 Lorenzini らの英国研究では、男性と心電図異常が発症の予測因子でした。 HR (ハザード比 = 相対リスクの一種で、何倍起きやすいか) は男性 2.91、心電図異常 4.02 です。
患者の予後は、国際レジストリ SHaRe (4,591 人) が報告しています。 原因変異のある患者は、ない患者より有害な転帰のリスクが約 2 倍でした。 絶対リスクで見ると、40 歳未満で診断された 100 人中 77 人に 60 歳までに何らかの転帰が生じました。 ここでいう転帰は、心房細動や心不全の悪化、死亡などを合わせたものです。 60 歳超で診断された人では、70 歳までに 100 人中 32 人でした。 負担の中心は心不全と心房細動で、生涯の経過観察が必要とされます。 なお、この研究の共著者には新薬開発企業の社員が含まれます。

その数字が自分に当てはまるか、どう判断すれば?

英国の研究では男性や心電図異常が発症の予測因子でしたが、個人への当てはめは難しいです。数値の意味は臨床遺伝専門医に相談しましょう。
ここまでのまとめ: 浸透率は家族検診で約半数、一般人口では約 2 割と幅があります。自分の数値の意味は臨床遺伝専門医に相談しましょう。
症状と受診の目安:早めに循環器内科へ行くべきサイン

健診で心電図の指摘を受けたけど、様子見でいい?

健診の心電図で左室肥大などを指摘された場合や、家族に若くして突然死した人がいる場合は、早めの受診サインです。循環器内科で相談しましょう。
症状は無症状から、胸の痛み・動いたときの息切れ・動悸・失神まで幅があります。 多くは通常の寿命を保ちますが、一部で致死性不整脈や突然死のリスクがあります。
次に当てはまる場合は、早めに循環器内科を受診してください。
- 若い家族や本人に、原因のわからない失神がある
- 家族に、若くして突然死した人がいる
- 健診の心電図で「左室肥大」などの指摘を受けた
- 動いたときの胸の痛みや息切れが増えてきた
運動については、国内外で記載の立場が異なります。 2024 年の米国 AHA/ACC ガイドラインは、競技スポーツの一律制限は適応されないとしています。 競技への参加は、医師と話し合う共有意思決定 (= 情報を共有して一緒に決めること) で決めます。 一方、難病情報センターは「競技スポーツなどの過激な運動は禁止する」と記載しています。 自己判断で運動を始めたりやめたりせず、主治医に相談してください。

運動は全部やめたほうがいいんですか?

米国の2024年ガイドラインは競技の一律制限をせず、国内の難病情報センターは過激な運動の禁止を記載しています。自己判断せず主治医に相談を。
ここまでのまとめ: 若年の失神、家族の若年突然死、健診の心電図異常は早めの受診サインです。運動の可否は主治医と決めます。
遺伝子検査の選択肢:保険診療と DTC 検査の違い

23andMeみたいな検査で、肥大型心筋症は分かりますか?

23andMeは標準検査ではHCMを報告せず、扱うのはシーケンス型のTotal Healthのみです。そこで陽性でも、医療機関での確認検査が前提です。
HCM の遺伝学的検査は、2022 年 4 月から保険診療の対象です。 令和 8 年度の改定後も、対象疾患に含まれています。
| 項目 | 医療機関の遺伝学的検査 (D006-4) | DTC 検査 (例: 23andMe) |
|---|---|---|
| 対象者 | HCM が疑われ、症状や他の検査では診断がつかない人 | 誰でも購入可能 |
| 費用 | 5,000 点 (3 割負担で約 15,000 円) | 自費 (保険の対象外) |
| 結果まで | 約 3 ヶ月 | 商品により異なる |
| HCM の扱い | 診断と家族検診に使える | 標準検査では HCM を報告しない |
保険で検査するには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 臨床症状や他の検査では診断がつかない場合であること
- 国の施設基準に適合し、地方厚生局に届け出た医療機関で行うこと
- 原則として患者 1 人につき 1 回 (2 回目以降は医学的必要性の記載が必要)
どこで受けても保険になるわけではなく、届出済みの医療機関に限られる点に注意してください。 未発症の血縁者は、HCM の所見がなければ通常は保険適用外です。 遺伝学的検査だけで HCM と診断することはできません。
23andMe は、シーケンス型の Total Health でのみ HCM 関連の 10 遺伝子を扱います。 この 10 遺伝子には、サルコメア以外の PLN・PRKAG2 も含まれます。 DTC で陽性が出たら、医療機関での確認検査が前提です。 検査の選び方は、主治医か認定遺伝カウンセラーに相談してください。

僕も保険で遺伝子検査を受けられるんですか?

保険の対象は臨床診断された患者で、施設基準を満たし届け出た医療機関に限られ、原則1回です。未発症の血縁者は通常対象外なので主治医に相談を。
ここまでのまとめ: 保険の検査は「診断済み患者」「届出施設」「原則 1 回」が条件です。DTC は診断の代わりになりません。
検査結果の読み方:病的変異・VUS・陰性で何をするか

陰性なら、もう安心していいんですよね?

陰性でも未報告の変化が隠れている可能性は残ります。米国ガイドラインでは、家族歴があれば心エコー検診の継続が勧められています。
結果は大きく 3 つに分かれます。 VUS (= 意義不明変異。病気との関係がまだ判断できない変化) は、陽性とも陰性とも言えません。
| 結果 | 意味 | 次の一歩 |
|---|---|---|
| 病的変異 (疑い含む) | 原因と考えられる変化 | 第 1 度近親者の遺伝子検査を検討 |
| VUS | 意味が未確定 | 家族の検査は行わない |
| 陰性 | 既知の原因が未検出 | 家族歴があれば心エコー検診を継続 |
確信をもって遺伝学的診断がつくのは、HCM の約 40% 程度とされます。 陰性でも、未報告の変化が隠れている可能性は残ります。 VUS の判定は、研究が進むと変わることがあります。 原因変異があっても、同じ変異で経過が同じとは限りません。
一般人口で偶然見つかった陽性は、家系内の陽性と意味が異なります。 23andMe も、陰性の結果を安心材料と受け取らないよう臨床医に促しています。 結果を受け取ったら、遺伝カウンセリング (= 専門家と検査の意味や家族への影響を話し合う相談) を受けてください。

VUSと言われたら、家族に何を伝えれば?

欧州のガイドラインでは、VUSを根拠に家族の遺伝子検査は行わないとされます。判定は変わりうるので、遺伝カウンセリングで相談してください。
ここまでのまとめ: 病的変異は家族検査の入口、VUS は保留、陰性でも家族歴があれば検診継続です。解釈は専門家に相談しましょう。
家族への影響とカスケード検査:検診はいつ、どれくらいの間隔で

父の結果が分かれば、僕や子どもも調べられるんですか?

発端者で原因変異が見つかれば、親・子・きょうだいから検査できます。国内ガイドラインでは同じ変異がない血縁者は検診中止も考慮できます。
発端者 (= 家系で最初に診断された人) で原因変異が見つかると、血縁者を検査できます。 これをカスケード検査と呼び、第 1 度近親者 (= 親・子・きょうだい) から始めます。 同じ変異がない血縁者は、継続的な検診の中止を考慮できます。
| 状況 | 推奨される検診 |
|---|---|
| HCM 患者の第 1 度近親者 (遺伝子検査の有無を問わず) | 心エコーなどの臨床的スクリーニング |
| 国内指針: 変異あり・未発症 (20 歳まで) | 少なくとも 1〜1.5 年ごと |
| 国内指針: 変異あり・未発症 (20 歳以降) | 少なくとも 5 年に 1 回 |
| 米国ガイドラインの家族検診 | 小児 1〜2 年ごと、成人 3〜5 年ごと |
発端者の変異が不明な家系では、血縁者の遺伝子診断は行うべきでないとされます。 この場合は、遺伝子ではなく心エコーと心電図で見守ります。 欧州ガイドラインは、未発症血縁者の検査が幼い子どもでも適応となりうると述べています。 未成年の発症前検査には、専門家による遺伝カウンセリングが必要です。 子どもの検査時期は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと相談してください。

子どもの検査や検診は、いつから始めればいいですか?

米国ガイドラインは小児の家族検診を1〜2年ごととしますが、未成年の発症前検査には遺伝カウンセリングが必要です。時期は専門医と相談を。
ここまでのまとめ: 家系の変異が分かれば、検診が必要な人と不要な人を区別できます。子どもの検査時期は専門家と決めましょう。
治療の最新動向:心筋ミオシン阻害薬の効果と安全性

父の治療に、新しい薬があると聞いたんですが…

心筋ミオシン阻害薬のマバカムテンは、日本では2025年に閉塞性HCMのみで承認されました。非閉塞性へのこの種の薬の使用は日米とも未承認です。
従来の治療には、β遮断薬、中隔縮小術、ICD (植込み型除細動器) などがあります。 近年は、心筋の過剰な収縮を抑える心筋ミオシン阻害薬が登場しました。
| 薬 | 米国 FDA | 日本 (厚生労働省) |
|---|---|---|
| マバカムテン (カムザイオス) | 2022-04-28 承認、閉塞性 HCM | 2025-03-27 承認、閉塞性 HCM のみ |
| アフィカムテン (MYQORZO) | 2025-12-19 承認、閉塞性 HCM 成人 | 未承認・未申請、国内試験中 |
閉塞性 HCM (= 心臓の出口が狭くなる型) での主な試験結果は次のとおりです。
- SEQUOIA-HCM (282 人): 最大酸素摂取量がプラセボより 1.7 ml/kg/分 改善
- MAPLE-HCM (175 人): β遮断薬メトプロロールより 2.3 ml/kg/分 改善
- HORIZON-HCM (日本人 38 人): 出口の圧較差が平均 60.7 mmHg 低下
95%信頼区間 (= 真の値がほぼこの範囲にあると考えられる幅) は、SEQUOIA で 1.0〜2.4 です。 HORIZON-HCM は比較対照のない単群試験で、効果は投与前後の比較です。 同試験の有害事象 (= 薬との因果関係を問わず起きた好ましくない出来事) は 63.2% でした。 一方、添付文書上の副作用 (= 薬との関係が否定できないもの) は 2.6% (1 人) です。 有害事象と副作用は別の指標なので、混同しないよう注意が必要です。 同試験の共著者には製造販売企業の社員が含まれます。
安全面では、薬が LVEF (左室駆出率 = 1 回の拍動で送り出す血液の割合) を下げるおそれがあります。 添付文書は、LVEF 55% 未満では開始せず、定期的な心エコーを求めています。 日本循環器学会は、投与 8 週目の心エコーで LVEF 50% 未満なら中止を強く勧告しています。 導入は、学会が定める施設・医師の要件を満たす医療機関で行います。
非閉塞性 HCM への使用は、日本・米国とも未承認で、試験段階です。 ACACIA-HCM では、症状スコアの改善が 3.0 点と小さめでした。 LVEF 50% 未満への低下は、薬の群で 100 人中約 11 人、プラセボ群で約 1 人でした。 重篤な有害事象は 20.2% 対 14.7% でした。 MAPLE-HCM のような単剤使用も日本では未承認で、標準治療の置き換えではありません。 薬の使用は、必ず循環器専門医と相談して決めてください。

新しい薬なら、副作用の心配はないんですか?

添付文書は、心臓が血液を送り出す割合LVEFが下がるおそれを挙げ、定期的な心エコーを求めています。使うかは循環器専門医と相談してください。
ここまでのまとめ: 閉塞性 HCM では新薬が症状を改善しましたが、LVEF 低下に注意が要ります。非閉塞性への使用は未承認です。
指定難病の医療費助成と、生命保険・心の負担

父の治療費、難病の助成は受けられるんですか?

指定難病58の助成は中等症以上が原則です。満たさなくても、医療費総額が月33,330円超の月が年3月以上あれば軽症高額該当の例外があります。
HCM は指定難病 58 です。 助成は「中等症以上」が原則ですが、ただし書きで軽症でも対象になる場合があります。
| 区分 | 助成の要件 (新規申請時) |
|---|---|
| 中等症以上 (原則) | 次の大項目のいずれか 1 つ以上を満たす |
| ① | 心不全や不整脈の治療 (ICD 植込みなど) による入院歴 |
| ② | NYHA II 度以上で、運動能力の低下を伴う心不全 |
| ③ | 突然死・心不全のハイリスク因子が 1 つ以上 |
| 軽症高額該当 (例外) | 月の医療費総額 (10 割) 33,330 円超が年 3 月以上 |
①〜③はどれか 1 つで足り、すべてを満たす必要はありません。 軽症高額該当は、中等症の要件を満たさない人のための例外です。 NYHA (= 息切れの程度で心不全の重さを 4 段階に分ける分類) の II 度は、日常の動作で息切れが出る段階です。 ③の因子には、失神の既往や、HCM による突然死の家族歴などが含まれます。 申請には、難病指定医が書く臨床調査個人票が必要です。
生命保険では、業界団体が次の取扱いを周知しています。
- 遺伝学的検査の「結果」は告知不要で、告知されても引受に使わない
- ただし、遺伝カウンセリングや検査を受けた「事実」は告知対象になりうる
- 健診の心電図異常など、既に見つかった異常は保護の対象外になりうる
結果の保護と、受診の事実や既存の異常の告知は、別の話として区別してください。 迷ったら、加入する保険会社や生命保険協会の相談窓口に確認しましょう。
家族に伝えるタイミングや言葉選びも、遺伝カウンセリングで相談できます。 認定遺伝カウンセラーは、日本認定遺伝カウンセラー協会のサイトで探せます。

遺伝子検査を受けたら、生命保険に入れなくなる?

業界団体は検査結果を引受に使わないとしますが、受診の事実は告知対象になりえます。迷ったら保険会社の窓口や遺伝カウンセラーに相談を。
ここまでのまとめ: 助成は中等症以上が原則で、軽症高額該当の例外があります。保険や家族への伝え方も相談窓口を使いましょう。
よくある質問
Q1. 親が肥大型心筋症だと、自分は発症しますか?
必ず発症するわけではありません。 家族検診で見つかった保有者では、15 年で約半数が発症したと報告されています。 まずは心エコーと心電図の検査を、循環器内科で受けてください。
Q2. 子どもにも遺伝しますか?検査はいつからですか?
親が変化を持つ場合、子に伝わる確率は 50% です。 米国ガイドラインは、小児の家族検診を 1〜2 年ごとに行うとしています。 開始時期は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーと相談してください。
Q3. 遺伝子検査に保険は使えますか?
症状や他の検査で診断がつかない場合に、届出済みの医療機関で使えます。 症状のない血縁者は、通常は保険適用外です。
Q4. 検査結果は会社や保険会社に知られますか?
生命保険業界は、遺伝学的検査の結果を引受や支払に使わないとしています。 ただし、受診の事実や既存の検査異常は告知対象になりえます。
Q5. セカンドオピニオンは取るべきですか?
VUS の解釈や新薬の使用判断は、専門性が高い分野です。 マバカムテンの導入は、年間 20 例以上の HCM 診療などの要件を満たす施設で行います。 迷う場合は、主治医に紹介状を依頼して別の専門施設の意見を聞く方法もあります。
まとめ
肥大型心筋症は、MYBPC3・MYH7 などのサルコメア遺伝子が主な原因です。 子に伝わる確率は 50% ですが、発症するかは人により大きく異なります。 遺伝子検査は診断の代わりではなく、家族の検診を絞り込む道具です。 陰性や VUS でも、家族歴があれば心エコー検診を続けることが勧められます。 新薬は閉塞性 HCM で効果を示しましたが、LVEF の監視が欠かせません。 気になる症状や家族歴がある人は、早めに循環器内科を受診してください。
本記事は教育目的の情報提供です。 本記事は診療・診断・遺伝カウンセリングを代替するものではありません。 若い人の失神や、家族に若くして突然死した人がいる場合は、早めに循環器内科を受診してください。 検査や治療の判断は、主治医・臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーにご相談ください。 意識を失った、胸の痛みが続くなどの緊急時は、すぐに 119 番へ連絡してください。
参考文献
- MedlinePlus Genetics (NIH/NLM). Nonsyndromic hypertrophic cardiomyopathy. https://medlineplus.gov/genetics/condition/familial-hypertrophic-cardiomyopathy/
- 難病情報センター. 肥大型心筋症 (指定難病58) / 指定難病患者への医療費助成制度のご案内. https://www.nanbyou.or.jp/entry/320 / https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
- 厚生労働省 保険局医療課. 保医発0305第6号 別添1 (令和8年3月5日) D006-4 遺伝学的検査. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf
- PMDA. カムザイオスカプセル (マバカムテン) 電子添文 第4版. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/670605_2190047M1023_1_03
- 日本循環器学会. マバカムテンの適正使用に関するステートメント (第2版), 2026. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2026/06/statement_on_proper_use_of_mavacamten_2026-1.pdf
- 日本循環器学会 他. 2024年改訂版 心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Imai.pdf
- 特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究班. 肥大型心筋症の臨床遺伝学的検査の手引き (v7). https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/05/肥大型心筋症の臨床遺伝学的検査の手引き-v7.pdf
- Ommen SR, et al. 2024 AHA/ACC/AMSSM/HRS/PACES/SCMR Guideline for the Management of Hypertrophic Cardiomyopathy. Circulation 2024;149(23):e1239-e1311. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000001250
- Arbelo E, et al. 2023 ESC Guidelines for the management of cardiomyopathies. Eur Heart J 2023;44(37):3503-3626. https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehad194
- Ho CY, et al. Genotype and Lifetime Burden of Disease in Hypertrophic Cardiomyopathy (SHaRe). Circulation 2018;138(14):1387-1398. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30297972/
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- 金融庁 監督局保険課 / 厚生労働省掲載 Q&A. 遺伝情報による不当な差別等への対応の確保 (保険分野). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001255901.pdf / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001426275.pdf
- 23andMe. Clinician guide: Understand results — hereditary disease. https://www.23andme.org/en-int/clinicians/understand-results/hereditary-disease/
最終更新日: 2026-10-29
著者: 水野 悠(Yu Mizuno)(GeneLumen編集部 編集責任者・非医師)。公開された 18 件の医学エビデンス (tier 1=12 件 / tier 2=5 件) を横断分析・再構成しました。 引用元には NIH/NLM・難病情報センター・厚生労働省・PMDA・金融庁が含まれます。 日本循環器学会・AHA/ACC・ESC のガイドラインと、PubMed 収載の査読論文も含まれます。
本記事は教育目的の情報提供であり、診断・治療方針の決定は必ず主治医・臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラーにご相談ください。 緊急時は 119 / 各地域の救急外来にご連絡ください。
画像: いらすとや (https://www.irasutoya.com/) より
関連: 遺伝性疾患カテゴリ一覧
🇺🇸 アメリカ在住の方・英語で読みたい方へ(米国の制度とデータで書いた英語版。単なる翻訳ではありません): https://genelumen.com/genetic-diseases/familial-hypertrophic-cardiomyopathy-genetic-testing-mybpc3-myh7

